「家制度」とは、過去の日本で法律により定められた家族の形式です。
この制度はすでに廃止されていますが、その影響は現代にも見られます。
具体的には、どのような制度だったのか、そしてなぜ廃止に至ったのかについて、この記事で簡潔に説明します。
さらに、家制度の影響が現代にどのように残っているのか、具体的な例を挙げて紹介します。
「家制度」を簡単に解説!
「家制度」とは、明治31年(1898年)に制定された日本の法律による家族の枠組みです。
この制度では、家族の形態を法的に定義していました。
たとえば、大家族が家長のもとで一つにまとまる形式や、夫婦とその子供たちから成る小家族の形式が定められていました。
この「家制度」は、戸籍を中心として家を構成し、通常は祖父、両親、子どもという三世代が一つの戸籍を形成していました。
家長、つまり家の最年長の男性が家族の責任を担い、戸主とされました。
「家制度」の主な特徴は以下の通りです。
- 家の中で最年長の男性が戸主とされ、家に対する全権を持っていました。
- 家族は戸主の決定に従う義務がありました。
- 家の財産や権利は原則として戸主の長男に受け継がれました。
- 結婚は戸主の承認が必要でした。
- 妻は夫の姓を受け、夫の家庭に入ることが決められていました。
- 家の住居は戸主の承認を必要としました。
- 戸主には家族全員を養う義務がありました。
- 男系の継承を重視しました。
このように、家制度下では戸主が家族に対して強い権力を行使し、家族全員の生活を支える責任も負っていました。
男系(だんけい)とは、血統を男性を通して継承していく家系のことを指します。具体的には、男子から男子へと血筋が繋がっていくことを重んじ、女子や母方の血筋は考慮に入れません。
例えば、天皇家では、天皇の地位は男系の血統を通じて父から子へと受け継がれます。
家制度が設けられた背景には、家族内の序列を明確にし、家の最年長男性が権力を持って家族を統率することで社会の秩序を維持するという考えがありました。
この体制は、明治時代の国づくりの中で天皇中心の体制を推し進める上で重要な役割を果たしました。
家制度により、戸主と家族の関係を天皇と国民の関係になぞらえることで、天皇の絶対性を国民に浸透させることが意図されていました。
しかし、家制度には多くの問題点も存在しました。
例えば、女性には基本的に相続権が与えられず、男子がいない場合のみ相続権が与えられること、男児を産めない女性が批判されたり、離婚されることがあったりしました。
また、正妻が子を産めない場合、正妻以外の女性が産んだ男児が跡継ぎになることもありました。
妻が夫の許可なく働くことも制限されていました。
このように、現代から見ると考えにくい男尊女卑の観念が根強く存在していたのです。
「家制度」が廃止された理由とは?
昭和21年(1946年)に新しい日本国憲法が制定され、続いて昭和22年(1947年)に施行されました。
この変革の中で、民法も改正され、かつての明治時代からの家制度は廃止されました。
家制度が廃止された背景には主に二つの理由があります。
一つ目は、新憲法第24条との矛盾です。
二つ目は、連合軍総司令部からの要請で、天皇制を支える制度としての家制度を終わらせる必要があったからです。
新憲法第24条には、婚姻は男女の合意のみに基づくものとし、夫婦間の平等な権利が保証されることが記されています。
ここには、配偶者の選択や財産権、相続権、住居の選定、離婚を含む家族に関する事項が個人の尊厳と男女平等の原則に基づいて制定されるべきであるとされています。
家制度下では、戸主の許可がなければ結婚ができなかったため、この新しい規定と明確に矛盾していました。
さらに、昭和23年(1948年)の戸籍法改正により、家族の構成が「夫婦と未婚の子」の二代に限定されるようになりました。
これらの変化は、家族の自由と平等を法的に支持する方向へと導いたのです。
家制度の名残の例
家制度は廃止されましたが、今もその影響は多くの日本の文化や習慣に見られます。
その具体的な例を以下に紹介します。
入籍(にゅうせき)
現在も結婚に際して「入籍」という言葉を使います。
これは「既存の戸籍に加わる」という意味で、かつての家制度で「妻が夫の家に入る」という考え方に由来しています。
現代では夫婦どちらの姓を選んでもよく、新しい戸籍を作ることも一般的です。
〇〇家に嫁に行く
「嫁に行く」という表現は、結婚が夫婦で新しい戸籍を作るという現代の形にも関わらず使用されます。
これは女性が夫の家に加わるという古い家制度の名残りですが、現実には女性が実家との縁を切るわけではなく、形式的な表現に過ぎません。
結婚の際は男性の姓を選ぶ
夫婦がどちらの姓を選ぶか自由ですが、依然として男性の姓を選ぶケースが多いのも家制度の影響です。
長男が〇〇する
長男が家を継ぐ、親の面倒を見る、財産を多く受け継ぐ、家業を継ぐなど、長男にかかる期待は家制度から来るものです。
夫は外で働き、妻は家を守る
夫が外で働き、妻が家事や育児、介護を担うという役割分担も、家制度の考え方が影響しています。
共働き家庭が増える現代でも、家庭内での女性の負担が大きいことは珍しくありません。
まとめ
家制度について理解が深まったことでしょう。
家制度が廃止されて70年を超える時間が流れましたが、この制度を直接体験した人々や、その思想を引き継いでいる人々が存在するため、その影響は今も残っています。
性別に基づく役割分担の考え方は、すぐには変えられないかもしれませんが、少しずつでも平等で住みやすい社会を目指していくことが重要です。